*定年おじさんの遍路雑感 癒しの風景を探して (18日目)
79番天皇寺、80番国分寺と順調に打ち終わりました。ここ国分寺町には、遍路 に出る前から寄ってみたい所がありました。納経所のお坊さんにその住所と、 会社名を見せて、何処にあるのか尋ねてみました。ところが、場所は分るがが、そんな会 社は知らないとのこと、、、。 昨夜も宿のおやじさんが色々調べてくれたが、結局分らなかった会社です。104番 で探して、電話するしかないようです。 2002.3.25 80番札所 国分寺仁王門 近くの商店で聞いても誰も知りません。結局104で確認し、電話がやっと通じま した。電話に出た女性の話では、予約無しでは工場見学は出来ませんとのこと、 出発前に調べておくべきだったと、悔やまれますが後の祭りです。それでも効能 書については、別の男性が説明してくれると言います。暫らく待つと、丁寧な口 調の男性が出て、遠方からの来客に工場を見せられないのは申し訳ないと断って から、効能書きの説明をしくれました。効能書きを、今流に書き換えるについて は、お役所か何処かに再申請しなければならないとかで、いまだに当初の書き 方で通しているとのことでした。薬の成分には動物臓器が入っていて、心臓の 働きを活発にして血流をよくし、基礎体力をつけることを目的に作られている とのこと。おじさんの常備薬的な使い方は、間違っていないとお墨付きを貰いま した。永年の疑問が解けたようでほっとしました。こうして我家の伝承常備 薬は引き継がれていくのでしょうか。それにしても、家に帰ったおじさんが、 息子達夫婦にこの話をしたところ、効能書きについて否定も肯定もせず、ただ 笑っているだけでした。 一件落着したところで、次は13km先の81番白峯寺です。攻略本には「80番→8 1番には、11号線を通ると分りやすい」と書いてあります。人に聞きながら11号線 に出ると、この辺の11号線は道幅も大変広く側道もしっかりしていて、気持ち のよい走りが出来ます。どんどん走りました。しかしこの気持ち良さが落とし 穴です。後から分ったことですが、同じペ−ジの右隅に「高松まで10km、83番 へ直行」と書いてあり、これを見落としていました。 途中で道を聞いたおじさんも呆れ顔で断言しました。「ここまで来てしまって は81→80→83番札所と、一部逆打ちするしかないよ」と言って詳細な地図を書い てくれました。 こうしたてんやわんやの逆打ち騒動の後、83番一宮寺を打ち終え、84番屋島寺 近くの「広瀬旅館」に着いたのは、17:40と、今までで一番遅い宿着になってしまいました。 それにしても、今日は何人の人に道を尋ねたのでしょう。道を歩いてい るおじさん、庭に立っている小母さん、自転車で信号待ちしている高校生等 出来るだけ仕事中でない人を探して聞きまくりました。しかし、11号線を走って いると、聞く人がいなく、やむなく車のディ−ラ−に入って修理工の人にも尋ね てしまいました。皆さん本当に親切に教えていただきました。それでも今日の ような状態になってしまい、我ながら呆れてしまいます。 考えてみれば、遍路初日のコ−ス間違いを教訓に、札所から札所への各区間で最初と 中頃と終わりの3回は道を訊き、ついでに食堂を聞き、珍しい花の名前を聞きまし た。結願までに、少なく見積もっても、86*3=258人の土地の人にお世話になった ことになります。 振り返って、我々の日常生活にこれだけの遍路が押し寄せ、こうして道を聞いて こられたら、どんな気持ちになるのでしょうか。1200年続く遍路道という空間 に住む人々に引き継がれた、接待するという伝統と、それを守る気持ちがなけ れば、とても対応出来ることでは有りません。 「四国遍路ひとり歩き同行二人」にも「遍路は、進路を住民や道人に尋ね、その情 けにすがりながら札所を巡るのが本来の姿。地図や道しるべにばかり頼って対 話を欠いた修行は意味をなさない、、、」とあります。これを素直に、大らかに受 け入れてくれている土地の人達に、只々感謝です。更に、納経所のお坊さん、遍路宿のおやじさん、おかみさん、食堂のおばあ さん等々。又土地の人だけでなく、同じ遍路同士の交流も自転車遍路とはいえ、 数え上げれば結構な人数になります。 「定年おじさんの遍路雑感」では、主に1200年という長い間、遍路というものを 受け入れてきた四国の風景と土地柄について書いてきました。 人との交流については殆ど触れていませんが、無かったわけではなく、書き出 せば限りが無いほどの対話があり、情けを受け、教えられました。 遍路で貰った情け、教えはこれからの生活に生かし、何処かにお返しなければ なりません。 リストラに悩んだ末、これを積極的に受け入れ、次へのスプリングボ−ドに しようとしている人達の多かったこと。自転車で沖縄から北上中に四国遍路を していると言う同県人の若い女性、おじさん達が死ぬ思いで廻る八十八ヶ所を 事もなげに廻って見せる、バイタリティとしなやかさ、、、。今年卒業の大学 生。内定会社に就職してしまってよいものか、もう一度考え直そうと遍路に出 たと言っていました。定年退職後、夫婦で廻る車遍路の人達。若い頃出来なか った先祖供養をして廻っている人達、、、等々。この17日間、思い出しても実 に色々な人達と対話しました。大変な人数になります。その一人一人から沢山 のことを教えられました。その一つ一つをこれからの生活の中で、おじさんなり に消化し、結晶化しなければなりません。そして、必要な時に、その結晶を取り出 すことが出来るようにしたいものです。それがこの遍路旅から貰った宿題です。
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