*定年おじさんの遍路雑感
癒しの風景を探して
     (15日目)

15.

2002.5.25第22回更新

朝から小雨が降り出して、昨日、部屋のエヤコンで乾かしたばかりのスポ−ツシ ュ−ズが、又、濡れてしまいます。歩き遍路用のガイドブックには、防水型の軽登山靴 を薦めてありますが、自転車遍路には、それも大袈裟だろうと、おじさんは、普 通タイプのスポ−ツシュ−ズ(中敷の取り外し出来るもの)に、凹凸のついたビニ−ル製 の底敷きを入れました。こうしておけば、雨が入っても足の裏はそれ程ビショ ビショ感に悩まされることも無いだろうと考えたからです。しかし防水タイ プとは違います。靴に雨が染み込んでくる感じは、気持ち良くありません。半 ば成功、半ば失敗というところです。気持ちはちょっと重いスタ−トです。
今日は、このまま降り続く雨の中での横峰寺打ちとなるのでしょうか。少しずつ 坂道となり、石槌山の麓に入ったのが分ります。道沿いの民家の庭先に咲くボケ、 サクラ、アセビ、レンギョの花が雨に濡れています。坂道は続きますが、自転車 を押して上らなければならないほどではありません。このままの状態で、登山口 まで行けると良いのですが、、、。30分漕ぎ続けても、登山口は見えてきません。 自転車を押して歩くよりましですが、坂道での自転車は、、、まして雨降りは、 それは大変、、、。分っていても、ついつい弱音が出てきます。
そうだ、気持ちだけでも切り替えてみよう。雨降りの山道は、、、「太陽に照り付けられて、 汗だくになるよりはいいではないか。雨に濡れたサクラの花も偶には風情があ ってよろしい。雨に濡れた山里の風景は、しっとりしていてかえって良い。」等々、 無理やり良い方に考えながら、登山口までやっとの思いでたどり着きました。


2002.3.22
60番札所 横峰寺仁王門


此処からは1時間、歩きでの登山となります。東屋の休憩所で一息入れました。 さあ登るぞと、登山口に差し掛かった時、木の枠に立て掛けてある2・3本の手製 の杖が目に入りました。誰かが登り道中、枯れ枝を拾い、インスタント杖にした ものか、誰かお接待で作って置いてくれた物なのか、、、。おじさんは金剛杖を持っ ていません。以前、焼山寺、鶴林寺で自転車から歩きに切り替えた時、上りも 下りも、杖の必要性を痛切に感じました。枯れ枝を拾っては杖にしますが、すぐ に折れてしまいます。こんなに杖に頼って歩いているのかと、ビックリしたこと を憶えています。道中、枯れ枝を何本拾っては折ったことでしょう。その経験 からいって、この杖は自転車遍路にとって本当に有り難い気遣いです。
おじさんは、そのうちの1本を有り難く借りることにしました。雨で滑り易い山 道の上り下りの歩きにも、この1本で安心感が違います。歩き遍路にとって、 金剛杖の有難さは格別でしょう。道中、大切に扱い、宿では床の間に置くと聞き ますが、その気持ちは良く分りました。お参りを終え、登山口まで下りた時、 杖についた泥を払い、元の位置に返しました。お世話になったその杖に対し、感 謝の気持ちで思わず合掌です。
今日の11号線は交通量多く、雨で見通しも悪く最悪でした。右手に何時までも続く 低い山並みも、切れ目の無い車の列に遮られてまともに見ることが出来ません。 トラックの轟音と水しぶきを避けながらの走行は、命がけの修行(?)です。 お大師さんは、この光景を見てなんと言われるでしょう。宿に着く頃、やっと雨も上がりま した。


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