*定年おじさんの遍路雑感 癒しの風景を探して (4日目)
19番立江寺のご本尊は延命地蔵菩薩で、その胎内に納められている金の「子安 の地蔵尊」は、安産祈願のお地蔵さんだそうです。 遍路に出かける前、長男夫婦から9月出産予定という嬉しい知らせが届いたので、 日頃信仰心の薄いおじさんですが、ここ立江寺で初孫の安産祈願にとお守り札を 買ってしまいました。お札を大切そうにバッグにしまい、20番鶴林寺に向 かう道すがら、おじさんは自分の息子が生まれる当時のことを思い出していま した。当時、世の中は右肩上がりで、どこの工場も新技術の導入に忙しく、毎日が 戦場のようでした。お母さんが臨月になっても、深夜帰宅だったように覚えてい ます。気持ちに余裕が無く、お守りどころでは有りませんでした。ところが、孫の 誕生となるとどうでしょう。ちょっと離れて見るせいか、嬉しさを噛み締める余 裕が出来て、頼まれもしないのに安産祈願のお守りを買い、おじさん自身が楽し んでいるようです。当時、この余裕で子育てが出来ていたら、息子ももう少し大 らかに育っていたのかも知れませんが、、、。そう考えるのは後になってからのこと で、今ではおじさん似の、せっかちな仕事人間をやっているようです。 1時間近く走って、民宿の「金子や」を過ぎると、坂道が始まります。昨日の焼山 寺に続き、自転車を押したり、引っ張ったりの難行苦行が始まります。連続して 登り進むことが出来なくて、あの曲がり角まで行って休み、この先の日陰ま で行って一休みと、息も絶え絶えという状態です。 阿波の難所は1)12番焼山寺 2)20番鶴林寺 3)21番太龍寺と言われて、大変さ 加減はある程度覚悟していましたが、此れほどまでとは思いませんでした。 昨日の疲れた体に追い討ちを掛けるようです。 2002.3.11 阿波の難所は「一に焼山、二にお鶴」 20番札所鶴林寺 仁王門から参道を見る こうして木立に囲まれ、薄暗い山道を黙々と登って行くと、急に目の前が開け、突 然広いアスファルト道路に出てしまいました。攻略本で調べてみると「自転車 は最低ここまであげるべし」と書かれた「鶴峠」のようです。 人間はと言うよりも、おじさんは勝手なもので、自転車遍路をしていれば、山道で 自転車を引き上げのは分りきっているはずなのに、目の前を通る観光バスを見 ると、なにか自分が不毛な努力をしているように感じてしまいます。修行が足 りません。攻略本は、さらに上に2箇所の自転車引き上げポイントを紹介してお ります。この際おじさんは心を入れ替え、もう一苦労してみようと少々サディス チィックな気持ちで上を目指しました。 「あと900m」というポイントまで自転車を引き上げ、そこから歩きだしました。 山道の階段には薮椿の赤い花が1輪づつ置いたように落ちており、疲れた1歩 1歩を癒してくれます。何度も自動車道を横切って、やっとの思いで頂上に到着し ました。 本堂の両サイドには、柵の中に大きな鶴の像があり、これがお地蔵さんを守った という二羽の鶴のようです。お参りを済ませ、石段に腰を下ろして呼吸が整う まで休んでいると、山の冷気が身にしみてきます。 自転車での下りは快適の一語です。広いバス道路を、おじさんが独り占め して、大滑降をしながら太龍寺へ向かいました。太龍寺へは片道ロ−プウエイで 輪行し、帰りは攻略本に書かれてあるように「激ダウンヒルを楽しもう」とし ましたが、この期待は大外れで、道はひび割れ、自転車はブレ−キを掛けっぱ なしです。あたかもロ−プウエイを往復使えと言わんばかりのようです。 もっとも、鶴林寺の道のように広く滑らかな激坂も考えもので、63才のおじさん でさえ、ちょっといい気になっていたら50km超えのスピ−ドで走り降りていま した。後から考えても、交通事故をおこさなくてよかったと、冷や汗ものです。 山から下りたところが民宿坂口屋です。今日はゆっくり休み、明日は室戸岬の 先端24番最御崎寺までの100kmに挑戦してみましょう。本物の「修行の道場」 となるのでしょうか、、、。 標高600m 21番札所 太龍寺
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