*定年おじさんの遍路雑感
癒しの風景を探して
     (1日目)

1. 春だ、菜の花、 遍路に出よう

2002.4.25 第8回更新

「転機としての四国八十八ヶ所」の著者・賀山耕一さんは、その冒頭に「巡礼は道中に あり」と書きました。 病後の体力回復に励むおじさんも、「道中を大切にし、じっくりと八十八ヶ所を 廻りきること」を目指すことにしました。 そしてその道中、今に残るお大師さんを育てた風景や、お大師さんの教えの 痕跡を見つけ出し、それを感じ取ることが出来ればと考えたのです。
俳句では春の季語にもなっている「お遍路さん」だが、さて出発は何時にし ようか、、、。色々考えた末、おじさんは人混みを外して、春にはちょっと早い 平成14年3月8日(金)夜出発と決めました。
以前から取り寄せていた「自転車遍路の攻略本」(以後「攻略本」と呼ぶ) や、図書館で借り出した遍路関連の本、インタ−ネットによる「遍路」検索等を総 動員して、全21日間の詳細な走行・参拝・宿泊計画を作りました。まるで現役時 代の出張計画です。
早速1番霊山寺近くの宅急便屋さんを探し出し、前もって送っておく自転車の 営業所留めが可能かどうかを確認しました。夜行特急バスの切符も手配しました。 徐々にではあるが順調に準備は進み始め、 次に宿の予約に取り掛かったところで、どうも様子が違うぞと初めて気が付き ました。遍路出発の約1ヶ月前のことです。
初日の宿こそ予約を受け付けてくれたものの、2日目以降は何とも要領の得ない 返事で、予約を受け付けてくれません。そのうち、ある民宿のおばあちゃんと思しき 人の1言で全てが分ったのです。「お四国参りは雨の日もあるし、何処かで足も痛く なるでしょう。その時、その時のお遍路さんの状況を考えて明日のお宿を探し なさい」と。これだ!生身の人間が自然と向き合って自分の足だけを頼りに 遍路を続けると言うことは、新幹線の時刻表を見ての出張とはわけが違う。 「その日その時の状況に合わせて、現地で計画を見直し ながらじっくりと回り切りなさい。 四国にはそれを受け入れる土壌がありますよ。」ということのようです、、 、、。
計画通りに事を進める事のみを価値と認める現代のやり方とどこかが違う。 四国に足を踏み入れる前から、何処かで読んだ「お四国は異次元の世界」 に迷い込んでしまいました。
こうなったら今迄の日常を脱ぎ捨てて、裸でお四国 の世界を廻ってみよう。脱ぎ捨てた分だけ感度が増し、有るがままを感じるこ とが出来るかもしれません。そう心に決めたおじさんは、予定通り3月8日のちょ っと寒い夜、「春だ、菜の花、遍路に出よう」と明るく歌いながら徳島行きの夜行 バスに乗り込みました。


2002.3.8

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