小さな旅行記
*琵琶湖1週150km自転車ツ−リング* 2001.11.5.第6回更新
ある日何気なくテレビを観ていると、若いキャスタ−が大きな湖の縁を自転車で走っている絵が写っていた。琵琶湖に浮かぶ竹生島付近の湖岸道路らしい。
それから程なくしてお母さんのス−パ−での買い物を待つ間、本屋で立ち読みしていると、旅行マガジン「びわ湖へでかけよう」が目に入った。手に取ると見開き1ペ−ジでサイクリングが取り上げられており、これ又湖岸を走る女の子が写っている。どうも琵琶湖1周サイクリングロ−ドがあるらしい。雑誌編集者の「いかにも、、、。」という写真につられておじさんのサイクリングの虫が騒ぎ出した。とは言うものの地図を見ると湖北はトンネルが続きかなりの山越えのようだ。自転車で大丈夫だろうか。
それから更に程なくして2001.10.3(水)日経新聞夕刊に「琵琶湖自転車で
”周航”広さ体感」という見出しが出た。榎さんという記者がサイクリング暦
40年の宮尾克子さん(61)と一緒に2日間で琵琶湖1周を廻り終えた記事だ。気に掛かっていた湖の北端を走るくだりは次のように書いてあった。(「」内引用)。「標高422mの賎ガ岳は1583年に豊臣秀吉の天下取りを決定つけた合戦の有った地。起伏の激しい山道をこぐ。しかし疲労した足はペタルを踏み下ろせない。もうだめかと思いつつ、克子さんの指示通り、ただひたすら車輪だけ見つめこぎ続ける。---」と続いている。どうもきつい山道ではあるが自転車での通行は可能なようだ。
そうと分ればやるしかない。お母さんには来年実施予定の四国88ヶ所自転車巡礼のトレ−ニングが必要だとかなんとか説明。突然滋賀県行きを聞かされ驚いたお母さんは「家の近くの海岸道路を100回往復したらどうですか、、」と言う。これを聞き流し、早速宿の手配やコ−スの設定を進めだした。
1.「RIDE&BIKE」 日程計画(実績)
計画では前日ファンカ−ゴに自転車を積んで準備、翌朝早く家(愛知県碧南市)を出発し、東名、名神、北陸自動車道と走って今津の宿へ車を置く。そこで自転車に乗り換え、その日の内に北周りで琵琶湖を半周弱して
1日目の宿に入る。
2日目は残り半周強を湖東廻りで今津へ帰ると夕方になるだろう。それから自転車を車に載せ、帰り支度をして家まで運転するのは年寄りには応えそうだ。ここはもう1泊して3日目は以前から行きたかった京都のお寺を車でゆっくり廻って帰るとしましよう。今回はちょっと余裕の2泊3日のツ−リングだ。
日程実績
年月日 |
車発着地&時刻 |
自転車発着地&時刻 |
宿泊先 |
2001.10.12(木) |
自宅発6:08 今津着9:50 |
今津発10:08 彦根着16:00 |
彦根 トヨタ琵琶湖荘 |
2001.10.13(金) |
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彦根発 8:43 今津着17:00 |
今津 丁子屋 |
2001.10.14(土) |
今津発8:12 自宅着16:38 |
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2.「RIDE&BIKE」ツ−リングデ−タ
自動車デ-タ
往復 |
ル−ト |
走行距離 |
所要時間 |
燃費 |
往き(10/12) |
愛知県碧南-滋賀県今津 |
192.0km |
3時間42分 |
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帰り(10/14) |
今津−京都府大原−碧南 |
213.0km |
8時間26分 |
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合計 |
碧南-今津−大原−碧南 |
405km |
----- |
15km/L |
自転車デ-タ
往復 |
日時 |
走行距離 |
平均スピ-ド |
1日目(10/12) |
2001.10.12(木)10:08-16:00 |
65.9km |
17.2km |
2日目(10/13) |
2001.10.13(金)8:43-17:00 |
90.4km |
17.3km |
以下に自宅スタ-トから帰着までの顛末をツ−リング雑感として写真を交えて項目別に纏めました。ご覧下さい。
3.ツ−リング雑感
1.道&風景
初日は今津に車を置き、平坦な湖岸道路を161号線に沿いに北に向かってゆっくりと走り出した。薄日の差す絶好のツ−リング日和だ。ペタル1漕ぎ毎に「気持ちがいい、気持ちがいい」と声に出して言いたくなるほどだ。湖北の山道を登る前に湖岸沿いの隋道を4つばかり潜り抜けると桜の古木、大木の並木道となる。今は緑濃い夏でもなし紅葉の秋でもなし、樹木にとっては微妙な季節だ。葉っぱの深い緑色が抜け並木のトンネルの中はやけに明るく、日の光が老木の木肌を照らし出している。年輪を重ねた太い幹は苔むして深い色合いとなり、風格を感じる。この時期「桜は花」だけでなく「桜は幹、枝ぶり」と言いたくなる。歳のせいか、、、、。
海津大崎の見事な桜の並木
ここを通過するといよいよ山越えの303号線、8号線と続く。山越え前に飲み物を買おうと入った小さな雑貨屋に立ち寄った。店のおやじに道順を確認しがてら山道の凄さ加減を聞いて見ると、予想に反して「大した事はないよ」と言う。ところがいざ登りだしたら先日の新聞記事通りとなってきた。日頃心配の膝がいかれるかと思ったが、その前にお尻の頬っぺたあたりの関節が痛くなってきた。ギヤ−を最減速にして、坂の途中で止まってしまわないように地面だけ見て漕ぎ続けた。ここに至って考えてみればあのおやじ、魚や雑貨の仕入れには自転車を漕いで行くわけがない。車で登れば「大した事はないよ」になるはずだ。それを聞いて喜んだ自分の心が弱い、、、。山越えのトンネルは3つで、岩熊トンネル以外は側道があり自転車も通行できる。それでも薄暗いトンネルの中は一刻も早く抜け出したい。最後の賎ガ岳トンネルを抜けると再び湖北の湖岸道路に出る。ここからは「さざなみ街道」自転車・歩行者専用道路だ。
賎ガ岳トンネルの出口
竹生島を右手にして前後に誰一人いない自転車専用道路を自分一人で走っていると本当にのどかで贅沢な気持ちになる。薄雲が広がり日が陰ると湖岸から湖上にかけて生える葦や樹木や遠くに浮かぶ竹生島の風景全体がねずみ色になり、水墨画の世界となる。 今津をスタ−トしてもう4時間も経つ。昼飯を食べねば、、。ここから彦根までは約15kmと後一息だ。ちょっと黒壁スクイェアに寄り道して食事としよう。古びたうどん屋でおばあさんの作るニシンそばを食べた。平坦な道を何処までも走り16:00今夜の宿泊所彦根松原の琵琶湖荘に着いた。
竹生島付近の湖上の樹木 水墨画の世界
次の朝8:43宿を出た。今日は約100kmの長丁場だ。空は朝から厚い雲が垂れ込め風が冷たい。今回のツ−リングで「雨の中を走る練習」が出来たらと雨合羽を持ってきている。備えは十分だが気持ちは晴れない。スタ−トしてすぐ滋賀大の横を通り抜けて湖岸に出ると、車道を3人5人と塊になって若いサイクリスト達が物凄いスピ−ドですれ違っていく。大学の自転車部か一糸乱れぬペタルさばきだ。服装と言い、脚の太さといい一団となって走る迫力は大変なものだ。その後もレンタサイクルを含めて湖東では多くの自転車に出会った。そう言えば昨日は自転車には1台も会わなかった。やはり山道は皆敬遠ぎみか、、、。琵琶湖大橋に近ずいた頃から雨が降り出し、路面も濡れてきた。さあ雨中走行の練習だとばかりに雨合羽を取り出して着た。合羽を着たまま走るのもこの位の気温ならそれ程蒸れる事もなく大して気にならない。ところが雨の中を暫らく走ると雲の切れ間から太陽が顔を出した。とたんに合羽の中の湿度が上がり蒸し暑くてたまらない。すぐ脱いだ。こんなことを2度3度と繰り返し、雨具に関するノウハウを手に入れた1日だった。夏の雨はさぞや、、、と思いやられる。道路は平坦なせせらぎ街道が湖岸に沿って何処までも続く。風景は何処の田舎にも見られそうで、どことなく懐かしい田園風景だ、、、。
何処にでもありそうでどことなく懐かしい 湖東の風景
琵琶湖大橋を渡りきってすぐ近くの食堂で昼飯を食べ、さあこれから最終ランの40kmだ。店を出て161号線を北に向かって走り出したが、すぐにこの道自転車にとって殊のほか走りにくいことが分った。湖東の湖岸道路のひたすら平坦な道路がうそのようにアップダウンが激しくなり、おまけに道幅は狭く車の交通量も多い。この状態が勝野近くまで続いた。この区間と昨日の山越え、藤ケ崎トンネルを出て国道8号線塩津浜から賎が岳トンネルに至る間は大型トラックも多く自転車走行は要注意だ。
1信号分の車の列をやり過ごす間は道端に退避し、次の車の一団の気配を後ろに感じ出すまで全速力で走るということもした。 西近江路途中、ガイドブックブックに載っていた白髭神社と48体石仏に寄る。
白髭神社の湖上の鳥居と48体石仏
こうして風車村まで来ると平坦な何処までも続く道となる。日が西に傾き出した17:00
2泊目の宿、昨日車を預かってもらった丁子屋に無事到着して全 150kmのツ−リングは終わった。今日はゆっくり休み明日は遅い出発としよう。
2.宿
1泊目は彦根市松原の湖岸に立つ会社の保養所だ。若いときから時々利用したが今回久し振りに行ってみて驚いた。外観は昔と同じだが、部屋はツインのベッドで広くて清潔だ。バストイレは暖房水洗、ドアの取っ手は金ぴかのブレス製。朝は和洋のバイキング、夕食はボリュ−ム満点の鍋、かに料理と至れり尽せりだ。今の若い人はこうでもしないと保養所の利用はしないのだろうか。変に感心する。管理人さんは予約受付から送り出し迄マニュアル通り正確でてきぱきと処理してくれる。殆ど言葉を交わすこともない。全てが清潔なホテル並だ。
二日目は今津湖水浴場が目の前の旅籠風宿、丁子屋だ。この建物は道路に面した側が200年前に立てられたとのこと、ご主人もお上さんもこの家に馴染んだ京都弁(?)をゆっくり話し、がさつな三河の田舎者の私には少々じれったい。外観と言い、格子戸といい正に時代劇だ。部屋は当然のことながら古めかしい。トイレはここだけを俄かに改造したみたいで和洋が並んで作られているその前の手洗いと言えば、昔の修学旅行を思い出させる長く続ずいた流し台式のやつで改造したトイレといかにも釣り合いが取れてなくその雰囲気がで楽しい。部屋に入ると廊下の向こう側の部屋のおばさん達のパワ−炸裂の話し声が喧しい。夕食時、膳の横に座ってお給仕をしてくれたお上さんが「明日の朝食時間は」と聞く、「明日は大原のお寺参りだからゆっくりめの8:00にして下さい」と頼んでおいた。 明朝朝早く入り口の襖戸が開き、お櫃とお盆を持ったおやじが寝ている私を見下ろしている。時計を見るとまだ7時をちょっと過ぎたばかりだ。ビックリして飛び起きた私を尻目に、敷いてある布団の横に食卓をセットして「よい天気ですね」とか何とか挨拶して出て行ってしまった。部屋の中はまるで昔の学生下宿のようだ。食卓は昔ながらの一汁一菜「味噌汁、卵、のり、ご飯」のシンプルさ、実にすっきりして言うこともない。それにしても2階の部屋まで食事を運んでくれるこの気配りは何だ。この2日間で新旧宿泊施設の好対照を見た。貴方ならどちらを選びますか。唯一共通点は安いこと。私は両方に泊まれて幸せでした。
彦根の琵琶湖荘と今津の丁子屋 新旧の宿
3.観光
一日目思いの外宿に早く到着してしまった。暗くなるまで暫らく時間もある。ちょっと彦根城周辺を一回りしてみよう。地図を頼りに言ってみると夕暮れの城郭が美しい。お城の堀を隔てた道筋に昔風の家構えうを残した商店街の一角にでた。夢京橋キャッスルロ−ドと言うらしい。その界隈を覗いて適当な土産物はないか探していたら「招福本舗 Happy Jack
」という猫グッズ専門店に出っくわした。店内は綺麗に飾り付けされ、店番をしていた看板の招き娘さんの口上「彦根の招き猫起源」に乗って小型招き猫2匹を買って帰った。
夕日に映える彦根城
招福本舗 Happy Jack で買ったお土産の福猫と 店内の看板招き娘さん
4.挨拶(気いつけてお行き、、、)
1日目今津の宿の駐車場でファンカ−ゴから自転車を下ろし、ツ−リング準備をていたら、おじいさんが物珍しそうに近ずいてきた。あれこれ話をする中で、「今からこの自転車で対岸の彦根まで走るんだ」と話したら、「それは大変だ、気いつけてお行き、、、」と言ってくれた。-−−−1人目
湖北の山道を登り賎ガ岳トンネルを抜けた直後、湖岸道路へ出る近道を聞くために畑仕事をしていたおじさんに声をかけた。おじさんは親切に道順を教えてくれた最後に「気いつけてお行き、、、」2度までも同じ言葉を掛けられ、はたと自分が道を尋ねられた時なんと答えるかと考えた。道を知っていれば正確に教えはするが、最後に「気おつけてお行き、、、」というような気使いの言葉を掛けるだろうか、掛けた事がない。このあたりの人達は昔からのやさしい言葉を日常生活の中で今に至るまで言い伝えているのかもしれない。
-----2人目
黒壁スクエヤのうどん屋で遅い昼飯を食べ、いざ出発と自転車に跨ったら、年寄りの自転車乗りが珍しいのか、うどん屋のおばあさんが外まで出てきて「気いつけてね、、、」−−−−3人目
2日目の朝、琵琶湖荘を出発しようとロビ-を出た所で、この保養所へ出勤して来たお手伝いのおばさんと朝の挨拶を交わした。その直後おばさんはちょっと立ち止まって「今日は北は時雨れますよ。気いつけて行ってください、、、」と声を掛けてくれた。曇り空とは裏腹に朝から気持ちが晴れやかだ。-------4人目
おばさんが注意してくれたように、こちら湖東ではあるがお昼近くには雨となった。雨の降ったり止んだりする中を何処までも走り続けたが目指す琵琶湖大橋まで届かない。さては道を間違えたかと、工事トラックの出入りを整理していた若い茶髪のお兄さんに、琵琶湖大橋へはこの道でよいか聞いてみた。なんと間抜けな質問だったことか、もう大橋へは数百mのところ迄来ているらしい。すぐ目の前の交差点を右に曲がれとのこと、その後驚いたことに、そのお兄さん「気いつけて行ってください、、、」と言ってくれるではないか。一瞬耳を疑ったほどだ。これまではこの言葉をかなり年配の人から言われてきたが、ここでこんなに若い人から同じ言葉が出てくるとは思いも寄らなかった。------5人目
偶然にせよ琵琶湖を一回りしてそれぞれの土地で5人の人からこんなに嬉しい気使いの言葉をかけて貰えるとは。ほのぼのとした気持ちになる。土地柄か小さい時から聞きなれ、使い慣れてきた言葉だろう。もうここまでくれば言葉と言うより、日常の挨拶にまでなっているのかもしれない。家に帰ったらこの挨拶早速使ってみよう。
北国街道沿いの 黒壁スクエヤ−ガラス館
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