*** 3.「金型関係記事」切り抜き帳 ***
2002.7.18 第3回更新

「金型とはこれこれ然々です。」と説明しても金型そのものが、日常生活の 中で目にすることが少ないものだけになかなか理解されにくい面があります。 そこで、世の中の各種メディア(新聞一般紙・経済紙・雑誌等)で金型関係の 記事が取り上げられた都度、気が付いたものからその内容を日常用語で説明し、 解説を積み重ねていったら、人々の中に徐々にでも金型のイメ−ジを定着させ、 感心を持ってもらえないものかと考えました。 特に家庭のお母さん達が「金型」に感心を持ってくれるようになったら、子供 達もその関心が伝染し、ひいては「金型のプロになってやろう」「世界に誇る日本の 技術の粋」を俺が引き継ごうと言い出す子供が現れるかもしれません。そんな思 いでコツコツと*** 「金型関係記事」 切抜き帳 *** を作って行きたいと思います。



*** 「金型関係記事」 切抜き帳 目次 ***

NO年月日出典タイトル 内容
12002.7.12日経朝刊1面、13面産業力「親の 傘から出ませんか」 ここをクリック
22002.7.13日経朝刊 13面金型図面流出で 指針 ここをクリック
32002.7.25朝日夕刊 9面スタ−ウォ−ズ おならせる出来(豊橋のプラモ会社) ここをクリック
42002.7.31日経夕刊 5面金型は「3次元ソリ ッド」で ここをクリック
52002.8.27日経朝刊 17面 光部品から金型 20人程度シフト ここをクリック
62002.9.14日経朝刊 31面 金型、委託で量産効果 中部の中小製造業 ここをクリック
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7
2003.7.1文芸春秋7月号 日中金型戦争「世界一の町工場街が滅ぼされる」 ここをクリック


NO.1 切り抜き
 
産業力「親の傘から出ませんか」

1.内容
「製品の正確な成型を左右する金型は、世界に誇る日本の技術の粋。そこに不 透明な取引慣行があるというのだ。」このような書き出しで始まる記事は国内 のある大手電気メ−カ−と町工場(金型メ−カ−)の間に起こった金型取引上 のトラブルを例に経済産業省が行政指導に乗り出したことを報じています。 事の起こりは、大手電機メ−カ−が完成した金型を受け取る際、「保守に必要 だから」と金型の設計図を受け取り、その図面で中国のメ−カ−に同じ型を作 らせたというものです。製品製造ノウハウの詰まった金型設計図やデ−タを無 断で流用されては競争はなりたたない。取引ル−ル無視も甚だしいとばかりに、 この金型メ−カ−が他社状況も調査して、経済産業省に訴えたと言うものです。
13面には国内金型メ−カ−の取引実態の調査結果もグラフ化されており、経済 産業省は、不透明な取引慣行を断ち切るために「契約書の締結及び締結内容の 明確化に努めること」を求めています。

2.コメント
金型は、製品の形を成型するものであるため、新製品開発競争の激しい電機・ 自動車メ−カ−にとって精度のよい金型がいかに早く手に入るかが、競争 を勝ち抜くための重要な条件になっています。 そんな訳で、何十台、何百台と成型機を持つ電機・自動車メ−カ−はその機 械への取り付け方から、成型方法まで全て熟知している金型メ−カ−が必要となり、 金型メ−カ−をある程度特定し、そのメ−カ−と技術・規格等共有し、「早く て精度のよい金型つくりのシステム」を構築してきました。日本の電機・自動 車の開発スピ−ドの速さはこのシステムが機能したことも一つの要因と考えら れます。 ところが世の中がデフレとなり「早い、精度がよい」の上にさらに「安く」が なければ競争に勝ち残れない時代となりました。そんな時、上記のような取引 ル−ル無視の事態が横行しだしたことになります。最初に必要な金型は「早くて 精度のよい」従来の金型メ−カ−に発注し、次の型はその図面で「安い」メ− カ−に発注したものと思われます。 問題は最初の金型を発注する時の契約書の中にノウハウ含みの設計図を買い取 る項目が有ったかどうかです。納期、支払い方法等一般的な項目に付いては 従来から契約書で締結されていますが、型毎の特有のノウハウの帰属や設計図 への反映費等は明確でない場合が多いと思われます。又金型を使っていく上での保 守管理に図面が必要なのも事実だし、今回のような設計図面の無断流用は論外 として、ノウハウ含みの設計図の買い取りか完成型のみの買取か等今後細部ま で詰めた契約書の締結を受注者・発注者共に真剣に作り上げていく必要があり ます。その意味で行政指導も時期を得たものと思わ れます。 ただここで問題は、行政指導となるとお役所によるオ−バ−指導となり易く、 従来より発注者・受注者間で作り上げてきた「早い、精度のよい金型つくりの システム」のよさを壊すのではないかという懸念もあることです。この点では システムを共有する受・発注者が本気で話し合い、「早い、精度のよい金型作 り」を残した公正取引ル−ルを作り、これを契約書に盛り込むようにしないと それこそ「日本の技術の粋」も世界に対して優位性を失うことになりかねませ ん。従来取引のよいところ、悪いところをこの辺で洗いざらい出し合い、21世 紀に通用する契約書として見直してみるよい機会かもしれません。



NO.2 切り抜き
 
金型図面流出で指針
経産省、契約明確化を指導

1.内容
金型メ−カ−の作成した設計図面や加工デ−タを顧客企業が海外で無断流用し ている問題で、経済産業省は十二日、取引明確化などを求める指針を発表した。 指針は金型の技術やノウハウが無断で海外に流出する事態を放置すると国内 金型産業の国際競争力低下を招くと指摘。自動車、電機など金型のユ−ザ−業 界と金型業界の双方に対して、取引契約を明確にするよう指導している。 このほか金型業界には知的財産の管理強化を、ユ−ザ−には公正取引を求めて いる。
(以上原文のまま)
この記事は切抜き帳NO.1  産業力「親の傘から出ませんか」の関連記事です。

2.コメント
「NO.1 切り抜き」のコメントと同じ。
ご参照ください。



NO.3 切り抜き
 
スタ−ウォ−ズうならせる出来
豊橋のプラモ会社

1.内容
従業員6人の小さな会社「ファインモ−ルド」(豊橋)が、世界の「ル−カス社 」のスタ−ウォ−ズの最新作映画に出てくる戦闘機「ジェダイ・スタ−ファイ タ−」の1/72プラスチックモデル玩具の商品化権を得て、8月上旬発売開始する。 ル−カス社の担当部長はファインモ−ルド社のモデルは「世界最高のクオリティ −。オリジナルより格好いい」とまで言い、そのデザイン力や、モデル成型用 の金型設計、金型製作技術を高く評価している。 大きな写真入記事で紹介しています。

2.コメント
自動車の何分の1かのプラモデルは実物の全ての部分を同じ割合で縮小して 作るのではなく、プラモデルにした時、最も美しく見えるように、部分的に 縮尺を変えて作るのだということを読んだ記憶があります。所謂モデル屋さん としてのデザイン力を問われるところでしょう。加えてモデル形状を彫りこん だ金型の表面仕上げの技術、寸法精度保証力等備えて、初めて大人も、子供も 夢中にさせるプラモデルが出来上がってくるのです。 そんな目でもう一度子供の作ったプラモデルを見直してみましょう。



NO.4 切り抜き
 
金型は「3次元ソリッド」で

1.内容
日経夕刊の連載ドキュメント「挑戦」「モノづくり世界と競う」の23回目は 自動車向け射出成型用金型の大手「クリエイティブテクノロジ−」(静岡県 浜北市)のモノずくりが取り上げられています。 岩月社長が「金型こそハイテクとロ−テクの接点」と指摘するだけあって、 15年前からCAD/CAM(コンピュ−タ−による設計・製造)設備、自動加工機等を 導入し、匠の腕だけに頼った従来の金型屋からの脱皮を図ってきました。しかし 最後の仕上げ、微調整は職人の手を加えるといった正にハイテクとロ−テクを 組み合わせた型造りを完成させたのです。今ではメルセデス、フォ−ド、ワ− ゲンのインパネやバンパ−等の大物金型を受注し、欧米メ−カ−金型が売上の 40%を占めるに至りました。 今後は自動車メ−カ−から送られてくる「3次元ソリッド」デ−タ−を直接取り 込めるよう準備を始めたと報じています。

2.コメント
今後、自動車メ−カ−で作られる上流デ−タ−は「3次元ソリッド」となって 行くと思われます。当然受けて立つ金型メ−カ−は3次元ソリッドモデル(以下 3Dモデルと言う)が扱えなければ生き残れません。 3Dモデルの良さは、コンピュ−タの中に実物と同じ中身の詰まった モデルを作ることが出来るところにあります。これにより、実際にモノを作る前 に、コンピュ−タの中で3Dモデルを使ったモノつくりの練習が出来るようにな ります。従来のようにモノを作ってから不具合を直していくやり方に比べれば、 格段に早く、格段に安くモノつくりが出来るようになります。 しかし、問題はコンピュ−タの中に3Dモデルを描き出すことの出来 る設計者、モデラ−等の技術者・技能者が大量に必要になることです。この人材確 保が会社にとって急務となり、設備導入と共にその教育が不可欠になります。

NO.5 切り抜き
 
光部品から金型 20人程度シフト

1.内容
光通信用部品と光ディスク金型を製造する精工技研は、受注低迷の続く光通信 部品から金型部門へ人員のシフトを始めた。
同社は昨年以来の北米の通信事業者の設備投資抑制に対応して、この人員を受注好調な光 ディスク金型部門(DVD)へ20人程度移動して部門間の繁閑を調整する。

2.コメント
部門を越えて繁閑を調整するために人を移動することは、それ程簡単ではない。 まず両部門に精通した技能者を常に養成しておかなければならないこと。技能者の 増減に対応できるよう、生産ラインやスペ−スが柔軟でなければならない等で ある。しかしこれらの課題を日常的に解決しておれば、上記精工技研の例のよ うに部門間繁間の調整を上手く乗り切ることが出来る。特に技能・ノウハウの かたまりの金型製作へのシフトを考えると日常的に部門間技能者交流を行って おく必要がある。

NO.6 切り抜き
 
金型、委託で量産効果 中部の中小製造業

1.内容
中部の中小製造業が中国進出に際し、安い労働力目当てだけでなくプラスαの 新ビジネスモデルで勝負に出た。
1.自動車用プレス部品の福富金属(愛知県大府市)は大量生産用金型に比べ採算 の悪い旧モデル用(補給パ−ツ用)金型を同業メ−カ−から集めて受注し、 上海に生産集約して量産効果を出す新しいビジネスモデルに取り組んでいる。
2.金型設計のアルファテック(愛知県三好町)は2002年から金型設計・生産 を上海に移し国内はメンテ、企画に特化する。但し生産は現地メ−カに委託し、 設備や従業員を抱えるリスクを避ける。

2.コメント
採算が悪く他社が手掛けない旧モデル用パ−ツ金型でも、数を纏めればかなり コスト低減できるという見本で、他にも応用できそうだ。但し補給パ−ツは、 部品単体で売られるため製品の外観品質は特に重要で、金型品質も量産金型以 上に注意が必要だ。 中国では設計、企画は別として、それに対応できる製造上の品質向上はかな りのレベルに達したようだ。

NO.7 切り抜き
 
日中金型戦争 「世界一の町工場街が滅ぼされる」

1.内容
文芸春秋7月号に日中金型戦争「世界一の町工場街が滅ぼされる」と題した10ペ−ジ に渡る高川武将氏のルポルタ−ジュが掲載されています。
ルポの「小タイトル」を列記すると

・悪いのは中国?いや本当の敵は国内にいた
・世界一の基盤産業が崩壊する
・加工デ−タが持ち出された
・中国人も困っている
・これは戦争だ
・河川敷にはホ−ムレスが

となっており、日本産業をべ―スで支え続けた金型屋さん達(基礎産業)が今、 企業存亡の岐路に立たされていると言う内容となっています。例を大田区に取 って説明していますが、 この地区は、かって1万を数える中小企業が集まり精密機械加工 の一大拠点でした。しかし今では多くの工場が倒産、廃業し、マンションの立 ち並ぶ単なる閑静な住宅街に変りつつあります。一方マンションの足下の河川 敷にはホ−ムレス用青テントが増えつづけています、、、と。では何故世界一の品質を 誇った金型産業が、このような状態になってしまったのでしょう。その原因は 上記「小タイトル」でも分るように、中小の金型屋さん達がそのノウハウの全 てを注ぎ込んで金型図面(又は加工デ−タ)を設計し、一型目を作り終わると 、発注元である大企業は2型目以降を労務費の安い外国の金型屋さんにその図面 付で発注し、国内の金型屋さんには発注しないと言う実情があるからとい うのです。これではさしもの世界一を誇った金型産業も衰退を余儀なくさ れてしまうというのです。 レポ−ト最後には、「工場跡に林立する巨大マンションとホ−ムレスのテントハウスを 眺めてみると、もはや立ちつくすしかない。」で結ばれています。 多くの人々に金型について関心を持ってもらうにしては、かなり暗い側面から 切り込んだレポ−トとなっています。

2.コメント
文芸春秋のような一般雑誌が金型産業について10ペ−ジにも 渡りルポルタ―ジュを掲載することは珍しいことといえるでしょう。金型について 日頃聞いたことも無い人々に広く金型の何たるかについて知ってもらう 非常に良いチャンスと言えます。しかし掲載内容たるや非常に残念なもの で、中小の金型屋さん達がコツコツと作り上げてきたモノ作りのノウハウを 仕事と一緒に労賃の安い中国等に持っていかれている現状が書かれています。 衰退して行くものに対する挽歌となっているのは、一般雑誌の性質上やむを 得ないのかも知れませんが元金型関係者、今、金型応援団の一員と しては少しばかり物足りなさを感じてしまいます。 現実には、途上国の安い型作りの事実を冷静に見、これを跳ね除ける為の方策 が着々と進められているのも見逃してはいけないと思います。 その一つは金型関係者が金型の受発注に関する不具合状況をアンケ−ト調査 し経済産業省を動かし、行政指導「契約書の締結及び締結内容の明確化に努め ること」を出させていることです。 又コスト面でも労賃の安い国々に負けない24時間無人・高速加工法の開発や 型構造を簡素化して安くて早い型作りへの取り組み、更に高精度な型製作等 色々な方策が取られ、新技術が開発されています。長い間の技術蓄積と更なる 研究開発、適正な取引慣行の確立で、これからも金型産業は名実共に 世界一の地位を保ち続けることと思います。文芸春秋に再度金型産業復活の ルポを期待します。

関連記事として2003.8.13(水)の日本経済新聞の社説は「国内のモノづくりで 競争力の回復を」「基盤型産業の維持を」をテ−マに金型産業について取り 上げています。そこでは「広く製造業に欠かせない金型や金属加工、鋳造、鍛造などの 基盤型産業が国内で生き残れない不安がある。若者が金型、鋳造などの業界に 希望を持って就職できるような環境づくり支援が求められている。」、、、と。

この様に各方面から金型産業について関心が持たれるようになったのはある意味 では良いことではありますが、金型産業自身も力強く復活している姿を広く 世間に知らせる時期ではないでしょうか。


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